銀の涙 通過点かな
涙なしでは読めません。。。
銀メダル。けっこうずっしりして、重いんです。重みもそうですけど、その価値も。
お母さんとまず抱き合って、メダルをかけてあげました。5歳から毎日、リンクの送り迎えなど、すべて自分のために費やしてくれた。銀メダルという形で恩返しできたのは良かったなと思います。
バンクーバーに入るまでは、この五輪が一つの集大成になる、という思いが強かった。小さい頃から、練習中でも、家にいても、五輪で金メダルを取りたいと思ってましたし、その思いをこの五輪にぶつけるんだ、という思いがあった。でも、終わってみたら、やっぱりこれは通過点なのかなと思います。これは次のステップなのかな、と。
この4年間で一番苦しかったのは、昨年のグランプリ(GP)シリーズのロシア杯(10月)が終わってからの時期。自分で映像を見てびっくりしたぐらい、ジャンプのタイミングが違ってました。そこからの練習がつらくて、本当に五輪に出られるかなと思いましたし、五輪までに間に合うのかなという不安がありました。それを考えれば、今回の五輪の出来は良かったのかな、とも思う。
ショートプログラム(SP)はトリプルアクセル(3回転半)ジャンプを含めて完璧(かんぺき)に出来ました。金妍児(キム・ヨナ)選手(韓国)と比べると、もう少し点数が近づいていても良かったんじゃないかなと思います。でも、フリーでは二つのジャンプのミスをしてしまったので……。トリプルアクセルを二つ決めたのに、アクセルより簡単な3回転フリップと3回転トーループの失敗。予想外だった。日本でしっかりと準備ができていただけに、本当に悔しい。
最後の最後で考えの「揺れ」が、このミスにつながったと思ってます。跳ぶ前に集中してジャンプにいけば良かった。だけど、「このジャンプを跳べば大きな得点がもらえる」と思ってしまった。その考えがミスの始まりでした。今後のいい経験にはなったけど、もう、バンクーバーでやってしまったことは取り戻すことはできないですね。
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トリプルアクセルに関しては、もう少しGOE(出来栄えの評価)の加点があっても良かったのにな、と思いました。今の採点方式で一番気になるのは、GOEの基準です。どんなジャンプを跳んだらプラス3になるのか、プラス1になるのか。フィギュアはタイムがはっきりと出るものではなく、人が採点して決めるものなので、その基準がよくわからなくなる。日本に帰って、もう一度ジャッジの方々に聞いてみたいです。
新採点方式になってから、ジャンプの難度という意味では一段一段落ちていると感じています。今季、プルシェンコ選手(ロシア)が復帰してから、男子でまた4回転が見られるようになったのはいいことだと思っています。ヨナ選手も難しい2連続3回転ジャンプを跳びますが、私もすべての要素を完璧に決めた上で点数を比べてみたかった、というのが正直な気持ちです。ヨナ選手には、現役を続けていてほしい。やはり一緒に試合に出て、しっかりと勝ちたい。
来季に向け、苦手なサルコーやルッツも少しずつ練習はしていきたい。今季は入れなかった2連続3回転も。次の五輪までにいろんなことに挑戦して、また試合でできるようになればいいなと思います。
今季は(タチアナ・)タラソワ先生に習いましたが、来季については考えています。先生もロシアですごく忙しいですし、体調のこともあるので。でも、先生に代わってから一段とステップの評価をしてもらえるようになりましたし、違った自分を引き出してもらえた。先生は知れば知るほど、まだまだ学ぶことがたくさんある。1年間ずっと一緒、というのは難しいと思いますけど、短期では指導を受けたいと思います。
これから4年。スケートも頑張りますが、大学では自分が必要だと思う講義、特に心理学を学んでみたい。他にもマラソンやヨガ、ピラティスなど、いろんなことも試してみたいと思っています。私生活も充実させないと、演技にも幅が広がりませんからね。
(かつてのコーチの)山田満知子先生からは、たくさんの人に応援してもらえるようなスケーターになりなさい、とよく教えられました。23歳で迎えるソチ五輪では、もちろん、金メダルを目指しますが、そんなスケーターでいることが一番の目標だと思います。(構成・坂上武司)