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浅田真央さんは「一発勝負」に臨み「大きな山を越えた」と言った
日経ビジネスONLINEの、岩崎夏海氏によるコラム
「なぜ浅田真央はぼくの胸を打つのか」が更新されていました。

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浅田真央さんは「一発勝負」に臨み「大きな山を越えた」と言った




東スポではあったけど、この著者に関しては

「11月のフランス杯で、本来、部外者が入ってはいけない
バックヤードに無断で入り、真央選手を取材していた。

岩崎氏は来年にも真央の本を出版し、IMG側もそれを了承している。

ただ、デリケートな時期でもあるため
「シーズン終了後に取材時間をもうける」旨を通達したにもかかわらず
岩崎氏は帰りの飛行機の機内、ホテル前などお構いなし。
揚げ句、立ち入り禁止エリアにまで侵入したため
ついにIMGは発売元の日経BP社に苦情を入れた。」

という報道があった。

「岩崎氏はスポーツ取材に慣れてなく
今後はルールにのっとって取材します」と
平身低頭であったとのことだけど・・・

正直、「スポーツ取材に慣れてなくてもわかるだろう・・・」と
不信感を感じたりもした。。。


でも、ジャンプの矯正を「絶不調」とか
お決まりの「女王対決」で煽るしか能がない報道ばかりの中
こういった「なぜみんなが、浅田真央という選手に
魅了されるのか・・・」を追求する視点には
やっぱり「うんうん!そうなのよ!」って思ってしまう。


「けしきが良い」、「古美術のような、凛とした美しさ」

真央選手の練習している姿を、こんな風に表現してくれる人は
なかなかいないと思うのです。

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 2010年の暮れ、ぼくは全日本フィギュアスケート選手権大会(以下「全日本選手権」)を取材した。場所は長野県にある長野市若里多目的スポーツアリーナ、通称「ビッグハット」。JR長野駅からはバスで10分ほどのところにある、1998年に行われた長野オリンピックではアイスホッケーの会場として使われた場所だ。

 ぼくが長野入りしたのは、開会式が行われた12月23日だった。この日まで、全日本選手権は世間の大きな注目を集めていた。というのも、昨シーズンのオリンピック銀メダリストで、世界選手権の優勝者でもある浅田真央さんが、今シーズンここまで芳しい成績を残すことができないでいたからだ。このままでは、来年(2011年)3月に控えた世界選手権に、連覇はおろか出場することさえ危ぶまれていた。出場を果たすためには、この大会で優秀な成績を残すことが求められていたのだが、それができるか否かが、この大会の大きな焦点となっていた。

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 しかしながら、ぼくの取材はそれとは少し別のところに焦点を当てていた。ぼくの興味は、そうした注目を浴びる中で真央さんが、一体どのように振る舞い、またどのように演技に臨むのか、あるいはそこでどのような表情を見せ、どのようなことを言うのか――といったところにあったのである。

 前回のコラムでも書いたのだが、ぼくが浅田真央さんを取材することの目的は、彼女の競技の成績やライバルとの関係などを見るのではなく、「なぜ彼女はこれほど多くの人々を魅了するのか」ということについて、その理由を探ることにあった。だから、彼女が世界選手権へ行くかどうかということについては、もちろん行ってもらいたいという気持ちはあるものの、たとえ行けなかったとしても、取材に対するスタンスには何ら変わるところがなかったのだ。

 また、それとは別にもう一つ、彼女が世界選手権に行けるかどうかということについて、焦点を当てようとは思わない理由があった。それは、これも前回のコラムで書いたのだが、11月にパリでのグランプリ大会を取材した折、すでにNHK杯時の不調からは脱し回復の兆しを見せていた真央さんが、この大会ではさらに調子を上げてくるだろうことは想像に難くなかったので、素晴らしい演技を見られるだろうということについて、ワクワクした楽しみな気持ちがあったのである。それが、世界選手権に行けるかどうかということよりも大きかったので、結果についてはあまり注目していなかったのだ。

真央さんには、凛とした「けしきの良さ」があった

 そうしてこの日、ビッグハットに到着したぼくは、夕方から始まった真央さんの非公式練習を見学した。すると、そこで強く印象に残ったことがあった。それは、練習に臨んだ真央さんの姿が、パリ大会に比べてより一層、「けしきの良さ」を感じさせるものであったということだ。

 ぼくは、古美術鑑定家の中島誠之助さんが、優れた一品に接した際に好んで使う「けしきが良い」という言葉が好きで、古美術の凛とした佇まいをこれ以上なくよく表していると思うのだが、この日の真央さんからも、そんな古美術のような、凛とした美しさが感じられた。

 真央さんの練習は本当に独特で、これは取材陣だけで独占しておくのはもったいないといつも思うのだが、凛とした風格と、泰然自若とした静けさというものが同居してて、見ていて飽きることがない。始まりは、いつもその日の調子をチェックするかのようにルーティンワークでリンクを何周か回るのだが、この間の真央さんは、まるで瞑想をしているかのような表情で、見ていて味わい深い。やがて身体が温まってくると、羽織っていた上着を脱ぎ、その日のテーマに取り組む。大会2日前のこの日は、ショートプログラムの演技を中心に、ジャンプの練習をくり返していた。

 今シーズン、ここまでの真央さんは、試合でずっとトリプルアクセルを成功させられないでいた。だから、それができるかどうかというのが真央さん自身の焦点ともなっているようで、この日は、特にジャンプの練習を念入りにくり返していた。また最後には、ショートプログラムの曲に合わせた演技の練習も行っていたのだが、そこでも軽く流すのではなく、本番さながらの真剣さで、ジャンプはもちろんスピンもステップも全力で取り組み、終わると汗だくになるほどであった。

 そうして練習が終わると、いつものように腰に手を当てたやれやれというポーズを見せながらも、リンクから降りると満面の笑顔をのぞかせていた。その様子から、この日の練習が充実したものであったことが窺われ、本番に向けてのぼくの楽しみは、ますますふくらんだのであった。

 練習後には、ビックハットの一階にある記者会見場で開会式が行われた。その様子も取材したのだが、これがまた実に興味深いものだった。というのも、そこに参加する選手たちが、皆和気藹々として仲が良く、楽しそうなのである。真央さんは、前年度の優勝者として男子の高橋大輔選手とともに最前列に座っていたのだが、終始ニコニコと笑顔を見せていた。

 特にこの日は、滑走順を決める際にとある選手が引いた「7」番の番号を、審判が誤って「1」番と読みあげるハプニングがあり、大いに盛りあがった。「1」と告げられた選手は、(プレッシャーがかかるその順番はできれば避けたかったため)「えっ!」と悲壮な声をあげたのだが、すぐに間違いに気づいた審判から「ごめんなさい、7番でした」と訂正されると、今度は気の抜けたような「ええっ?」という声を漏らした。そのやり取りがおかしかったために、選手たちは爆笑の渦に包み込まれたのだけれど、真央さんもやっぱり、みんなに混じって楽しそうに笑っていた。

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 そんなふうに、リンクを降りた真央さんは、笑顔を見せている場合が多かった。しかしながら、彼女がそういう雰囲気に完全に打ち解けて、心から笑っているわけでもないところが、また興味深く感じられた。彼女はいつも、一見にこやかでリラックスしているように見えるのだけれど、しかしよくよく見ていると、そういうハプニングに際しても、心から笑うというよりは、その喧噪を少し遠くから興味深そうに眺めているという感じなのである。そうして、その笑顔の背後には、いつも競技者としての緊張感を伏流させているのが感じられる。彼女の背筋は常に伸び、瞳の奥には勝負に賭ける情熱の青い炎が灯り続けているのだ。

 それが、浅田真央という人間の雰囲気を独特にしているところがあった。開会式後、女子選手の記者会見があったのだけれど、そこではこれまでの開会式の雰囲気とは打って変わって、シビアな質問が飛び交う緊張感の漲る場となった。しかしそうした変化に際しても真央さんは、さっきまでのにこやかな表情から真剣な表情へとシームレスに移行し、そこでも背筋をしゃんと伸ばした姿勢と、青い炎を灯した瞳を保ち続けていた。

 そうした様子を見ていると、彼女においてはあらゆる瞬間が勝負の場――あるいはそれへの準備の場なのだということが窺われた。かつて、「本番は日常、日常は本番」と言った武道家がいて、真に武術を極めようとするならば、本番は日常から始めるべき――いや、本番以外の日常の中にこそあると説いたのだが、記者会見に臨む真央さんは、それをまさに地でいくかのようだった。


↓ その②に続きます。
by patinage | 2011-02-08 23:25 | 新聞・雑誌・他メディア

浅田真央選手を応援しています♪
by patinage
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